ユーザーインタビュー

第15回 サウンドクリエーター/エンジニア 堀 豊(Yutaka Hori)氏



今回はJR高田馬場の駅から徒歩数分の立地にあるMake Hits Labのオーナーの谷様がレビューに参加して頂くという事で谷さんのご厚意とアイディアよりこのスタジオのユーザーであるエンジニアであり音楽プロデューサーである堀さんにKSD  C88-Referenceの魅力をお聞きすることになりました。



―この度は取材をお受け頂きありがとうございます。
―堀さんのエンジニアのキャリアからお聞きいたします。



堀氏)実は僕はエンジニアの修業はしたことはなくて。アレンジャーの岩瀬聡志さんという方のアシスタントをやっていて、いろんな現場に連れて行ってもらって、その間に西垣哲二さんというプロデューサーと知り合ってその方のスタジオのアシスタントの空きが出たときに誘ってもらってていう。



―そうなんですか。じゃあもう現場でやっていってという、たたき上げ的な



堀氏)そうですね。(笑)一番最初の仕事もマスタリングからっていう。



―いきなり。



堀氏)会った時に何やりたいかって聞かれたときにわからなかったので漠然としていて。君は海外でいうプロデューサー=エンジニアになれば全部できちゃうじゃない。と言われて。曲も作れるし、頼みたければ誰かに依頼したりとか。



―おー、そうなんですね。素晴らしい。



堀氏)マスタリングをまずやって、そのあとあとミックスやって。レコーディングやって曲作って。



―日本ではあまりないパターン?



堀氏)日本では職業的になっていますね。そういうのがあまり好きになれなくて。

―そうだったんですか。



堀氏)最初、マスタリングをやってと言われて、当時はマスタリングのやり方とか知らない中で何とか。



―すごいですね。



堀氏)それもアレンジャーの方が上げた音源だったんですけど。市販のCDをひたすら聴いてどうやったらそうなるのか。



―すごい。



堀氏)ひたすらもう何十パターンも出して。



―マスタリング機材も初めて触りながら。



堀氏)機材も普通のレコーディングスタジオだったのでProToolsしかないし。プラグインですね。何を組み合わせたらそうなるのかっていう。



―すごいですね。うらやましいというか。商業スタジオに就職してもそこまで経験できないですよね。堀さんはやはりクリエイティブなほうがお好きで。



堀氏)そうですね。クリエイティブのほうがあってますね。好きだし、やりたいですね。



―エンジニアリング以外にも。



堀氏)はい、曲も作ったりもしますし。アレンジもするし、ま、そのプロジェクトごとに、そういう仲間がいて、ま、ギター頼むんだったらこの人に頼んでとかそういうのができてるかなっていう感じです。



―今はフリーランスで活動されていて、こちらのスタジオは誰かのご紹介で。



堀氏)今までの活動場所のスタジオがなくなるという事で探していた時にちょうどサンレコ(Sound&Recording Magazine)に掲載があって。機材とかも今までのスタジオと同じようなものを使っていて、スタジオのコンセプト的にMacbookPro持ってくれば接続できるっていう環境だったのですごくいいなって思って使いだしたっていう感じです。

―こういうコンセプトのスタジオって他にもあるんですか。



堀氏)ほかになかなかないんじゃないですかね。プリプロルームっていうのはあったりはしますが。



―ええ。



堀氏)商業スタジオでMacBookさえあればみたいな。ブースもなくて逆にアーティストさんたちともコミュニケーションとれていいなあって。そういうのあこがれてたんですよ。アメリカンスタイル。



―斬新で新しい。



堀氏)最近は毎週使ってます。



―素晴らしい。



堀氏)オーナーの谷さんのおかげで。



―では本題というか。堀さんがいろんな総合的な立場で音楽のお仕事をする中で、例えばモニタースピーカーに対して今までどんなものをお使いでしたか。



堀氏)Genelecが多かったんですけど。前のスタジオの時はRCF、イタリアのメーカーですけど、家でも今それを使ってるんですけどどちらかというとラウドなモニターで、低音がちゃんと出ていて。



―イタリアのメーカーですよね。RCF、たしかSR系のスピーカーメーカーでもありますよね。



堀氏)はい。どちらかというと結構音量を出してローエンドを確認したいというのが目的です。ですのでそういうラウドなスピーカーを求めてたんですけど、C88はラウドさもあるんですけど正確なモニターですよね。



―そうなんですよね。



堀氏)初めて聴く環境でこれがあったら助かると思います。



―今すごく低域を気にされる時代といいますか。音源というか。作り方でもそういうのはあるんですか。



堀氏)そういった方向性になってますよね。なんていったらいいんでしょうね。サブローといいますか、僕はそういうのが流行る前から洋楽のほうが好きだったので、キックで音像作っていくような感じ。やっとそういう時代が来たかっていう感じです。

―そうなんですね。



堀氏)もしかしたら。



―日本じゃないんですね。そういう流れっていうのは。



堀氏)もちろん日本のJ-POPも作るんですけど基本的にはそういう海外のものにあこがれはありました。



―海外の作品のほうが。



堀氏)なんかこう迫力があるなってずーっと気にしてたけどなんか分からなかったですけどね。



―なるほど。



堀氏)いまそういうスーパーローとか流行ってるから、「そうだったんだ。」ってなってますけど。



―今ほんとにそういう話をよく耳にします。作る段階で見えていないと。というような。



堀氏)多分今まで気にしてこなかった部分だと思うんですけど。キックの音程とかあるんですよね。


―なるほど。



堀氏)基音の部分。DなのかCなのか。そういうのあんまり気にしないじゃないですか。日本の場合、あんまり出てないから。



―その低域の部分。



堀氏)逆にそこがしっかり揃うと結構ベースののり方も変わってくるし響き方も変わってくるのでローがちゃんとしっかり見えないとわからない。ヘッドホンだと確かに音色としてはわかりますが、どう響いてるまではわからない。そこを気にするようになってきたっていう事です。



―C88はその低域を確認できている。



堀氏)そうですね。部屋鳴りも結構あったんですけど、そのスタジオはそんなに吸音してなくて、それもあって結構ドーン
てくる感じでした。



―ライブなイメージ。



堀氏)はい。鳴らしたときにどう聴こえるか。



―KSD C88-Referenceを聴いたのはどこかで。



堀氏)初めてですね。ちゃんと聴いたのは。このスタジオが初めてです。



―まだ商業スタジオとかでは少なくて個人的なホームスタジオが多いですね。



堀氏)写真ではよく見たことがあって。ホームスタジオとか、もうちょっと小さいサイズのものとか。

―C5とかは小さいスタジオとか多いですね。



堀氏)ここ数年ホームスタジオとか見るとみんなKSDだって。



―堀さんが感じるC88の良さって。



堀氏)位相と定位ですね。C88で聴いた感じと自宅にかえって聴いて違和感がない、そうなってたよねって。



―はい。



堀氏)もちろん鳴り方は違うんですけどこうなってたんだなっていうのはちゃんとわかって。



―よく皆さんが懸念する、こんなにいい音で聴いていて上がりどうなんだろうって。でも他と比較するモニターがあれば問題ないって。



堀氏)そうですね。もしろリファレンスとして全然基準になるとなんじゃないですかね。



―楽器の音色とかC88の感じはいかがですか。



堀氏)やっぱりアコースティック系は自然な感じがします。もちろんエレクトリック系、低域も確認できますしミックス見やすいなあと。自分はここではミックスはまだちゃんとはしてないんですけど、ただここで録音したものをチェックすると「あ、ちゃんと録れてるな。」って確認できるので。



―Genelecとの比較とはいかがですか。



堀氏)こっちは別にサブウーハーがあって(2.1ch)ローの見え方は独特な感じがあって。ちょっとまだ慣れてはいませんこちらに関しては。



―基本KSD C88で作業していて。



堀氏)はい、そうです。



―なるほど。



堀氏)これ自分が作った曲なんですけど。(YuTA P Puzzle (feat. sae) [Remix] 再生中)



―かっこいい。



堀氏)これ結構ローが入っていて。

―確かに。



堀氏)安いスピーカーだとつぶれちゃうんですよ。



―わからないでしょうね。



堀氏)はい、確認できないですね。



―どのくらいまで下がいるんですか。



堀氏)20Hzとかいますね。



―そうなんですよね。この辺のディテイルがわかると聴いてて気持ちいい。



堀氏)シンセの細かい部分もわかるので良いですね。なんか高級感のある音ですよね。どちらかというと。



―今、他スピーカーメーカーも素晴らしいモニターがたくさんあって、でそれぞれの良さがあって。各社クオリティーが上がっているのを感じます。



堀氏)KSDは同軸で位相の感じがぴったり合います。なんかPMCみたいな感じもして。



―PMCもしっかりしていますね。非常に良いスピーカーです。



堀氏)昔あの「サウンドデザイナー」っていう雑誌があった時、割となんか試奏の記事を書いてくれという話がありました。



―試奏。



堀氏)スタジオに10種類くらい持ち込まれて聴き比べみたいな。その時もKSDはなかったですけど。



―そうなんですね。



堀氏)そうやって並べて聴くと全然違いますよね。その時は各メーカーのエントリーラインでしたけど。

―C88はサブウーハーなしでローが見えますので。



堀氏)正直私はサブウーハーはないほうが良くて。2chでどれだけ出せるか。普通のステレオのほうがチェックしやすいですね。そういう意味ではC88はやりやすいですね。



―2.1chよりは低域もちゃんと同じ軸上にあったほうが。



堀氏)そうですね。C88はこの音量で出しても破綻してないというのもいいですし。この部屋の大きさにしてはという。



―このスタジオは音量出せるのでC8よりはC88が優位かもですね。
でも堀さんのような方に出会えて光栄です。



堀氏)ちゃんとクリエイティブな部分はやりたいですし、かかわった作品には思い入れが残るようにしたいですね。



―ですよね。本当に。



堀氏)自分が何回も聴きたいかどうかっていう。作業中は何回も聴きますし、やっぱり楽しくないとつまらないですしね。それがないと苦行だけで(笑)



―堀さんは人との出会いがすごかったんですね。人徳ですね。



堀氏)谷さんともそうですね。前のスタジオがなくなる前にどうしよかなあと思って、ここ以外にも何か所か見たんですけど。



―確かにここは環境が良いですね。駅近でお洒落で。



堀氏)ちゃんとアーティストも呼べますし。機材もちゃんとそろってるし。今回KSDも入って。



―このスタジオにC88がフィットして本当に良かったです。KSDとしてはもしスタジオで例えばローが出すぎていたらEQで補正してくださいという事を推奨しています。自分の耳を信じて。



堀氏)それだけ自信があるってことですね。元の音に関して。



―KSDの信号の処理技術は凄いと思います。実は「Backes & Muller」というハイエンドブランドも持っていて、超高級スピーカーを作っています。



堀氏)ドイツのメーカーですよね。



―これからもよろしくお願いします。
今回は貴重なご意見ありがとうございました。


<プロフィール>

堀 豊

Engineer/Sound Produce/Compose/Arrange/Keyboard/Programming etc…

1983年生まれ。メジャー/インディーズ問わず、作曲やアレンジからミックス、マスタリングまで幅広く手掛けるサウンドクリエーター/エンジニア。最新エンジニアリングを駆使し、シンセサイザー、デジタルレコーディングシステムを自由自在に扱い、アーティストの音楽制作を全面的にサポートする。
サウンドプロデュース、アレンジからコンポーズ、ギターまでマルチに使いこなした才能はアーティストから絶大な信頼を得ている。
2021年よりプロデューサーズユニットYuTA P(ユタピー)を本格始動、シンガーソングライターsaeをフューチャリングボーカルに迎え、Puzzle(feat. sae)、Night Drive(feat. sae)をリリース。


<参加作品>

* 岡本真夜 前田敦子  石川よしひろ 逗子三兄弟  小椋佳 熊木杏里 伊藤由奈 ローラチャン 新垣勉 ヴィドール ALvino 米倉千尋 野川さくら 野田順子  KEYstone HAYABUSA GlassTop WISE Shun 宇都宮直高 千年弘高 えちうら しげのゆうこ 下川みくに Mizca ROLA 小林未郁 木下綾香 倉沢桃子 児玉結里菜 高本りな haruka より子 YURIE sae KaY 富永恵理 harumi 神林あゆみ THE SARUBAND REALHEART’S 所ジョージ 妃白ゆあ 真愛涼歌 透水さらさ  平井翔馬 よこスクロールズ 保持光 岡田淳一 しいたか。平山カンタロウ 堀江小綾 SINON JPFunkFamily ANTIOPA 410-163 チャチャチャ倶楽部 須藤楓 MELLOW GREEN WONDER  milk & honey 斉藤昌人 黒田晃年 高井ジョージ 池間史規  愛川聡 Jazzoomcafe ukurena Jun 家庭教師ヒットマンREBONE!アオハライド 天の茶助 キミのいない世界で JKからやり直すシルバープラン 新江ノ島水族館 ミツカン トラベルタウン 他多数

<SE制作>

* ロッテ 紗々

* 西友 サゲリク

* 東京ディズニーランド そっくりエッグ&ハント

* ANA VOICE787

* ユニクロ 1000VoiceForFleece

* 日本テレビ ZIP!  他多数

記事執筆

StudioOneクイックマスターガイド

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サウンドデザイナー記事

https://tunegate.me/P20171011007

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協力:Make Hits Lab

https://www.makehitsproduction.jp/

Sound&RecordingMagazine記事